事実の概要
Aマンションでは、ある日、Yが所有する607号室の天井裏を通る排水管の枝管から漏水事故が発生した。
この排水管の枝管は、直上階のXが所有する707号室の排水を本管に流す管であり、707号室のコンクリート床下と607号室の天井裏の間の空間に設置されている。
この漏水事故について、YがXに対して訴外にて損害賠償金の支払いを求めたが、これに対しXはYに対する同損害賠償責任が存在しない旨の確認を求めるとともに、管理組合Bに対して、当該排水管の枝管が共用部分である旨の確認を求めつつ、先行してBに支払った修理代金の返還も合わせて求め提訴したのが本件である。
争点
専有部分のコンクリート床と階下の天井裏との間に設置された排水管の枝管は、専有部分、共用部分のいずれに該当するか。
判決要旨
本件では、専有部分である707号室の台所・便所等から出る汚水については同室の床下にあるいわゆるスラブを貫通してその階下にある607号室の天井裏に配された枝管を通じて、共用部分である本管(縦管)に流される構造になっているところ、本件排水管はコンクリートスラブの下にあるため、707号室及び708号室から本件排水管の点検・修理をすることは不可能であり、607号室からその天井裏に入ってこれを実施するしか方法はない。
このような事実関係の下では、本件排水管枝管は、その構造及び設置場所に照らし区分所有法2条4項にいう「専有部分に属しない建物の付属物」にあたり、かつ、区分所有者全員の共用部分にあたると解するのが相当である。
参考
この判決の帰結として、Xの当初からの主張のように707号室のXが単独で損害賠償責任を負ういわれはなく、本件枝管は共用部分として区分所有者全員がその共用部分の持分の割合に応じて、損害賠償責任を負うことになる。