マンション管理士

マンション管理士とは

専門的知識や経験をもとに、
区分(分譲)マンションの運営・維持・管理に関する助言、指導等を
中心としたコンサルティング業務全般を手がける国家資格保有者です。

どんな資格・職業?

マンションにまつわる法的諸問題を解決する法的知識、管理組合の予算・決算・出納業務の適性をチェックする会計知識、建物の劣化診断や大規模修繕等を含む建物構造上の問題に取り組む建築知識など、総じてマンション全般の問題に精通するエキスパートである点で、
日常の受付・清掃業務等を行う「マンション管理人」とは全く異なる役割を担う存在です。
マンション管理士になるためには、マンション管理士試験という国家試験に合格した後に、マンション管理士として登録を行う必要があります。

なぜ専門家が必要か?

マンションは、もともと一つの建物全体に考えや価値観の異なる多数の所有権者(区分所有権者)が相並び存する以上、その管理・維持・運営に際し困難な問題に直面することが不可避といえます。
これら数々の困難を乗り越えマンションの適正な管理・運営を実現するためには、一方で明確なルール(管理規約)の制定と共に、他方でこの規約等を元に専門的立場から一本筋の通った指針を示せる存在が必要です。
この役割を最も的確に遂行できるのが専門家としてのマンション管理士である、と私は考えています。

マンションの曲がり角

昭和40年代からの建築ラッシュにより次々と誕生したマンションも、数十年の時を経て岐路に立たされています。
まだ居住に支障のない状態であれば、誰しもこのまま住み続けたいと願うでしょうが、いかに立派なマンションであっても建造物にも寿命がある以上、劣化・老朽化は避けて通れません。
今後、続々と訪れるマンションの転機を前に、あなたならどう立向かうべきと考えますか。

一番に思い浮かぶのが「建替え」という言葉ですが、実はこの建替えという作業自体それほど容易ではありません。それは区分所有法が、建替えというプロセス実現に極めて厳格な法的手続きを要求しているからです。
この建替え実現のためのキーワードを挙げるとすれば、円滑な合意形成と、迅速・的確な手続きの履践です。
そして、この過程において各方面の利害を調整し適切な助言・指導を行うために専門的知識と能力を発揮する適任者こそマンション管理士ではないか、と私は考えます。

心は住まいから

建物が荒廃するのを放置すれば、やがて、そこを生活拠点として暮らす人の心も荒んでしまうものです。
このように建物のコンディションという物理的側面と、そこに住む人の心という心理的な側面は表裏一体の関係にあると考えられます。
マンションという居住形態において、快適な暮らしとは、どうやって実現していくものでしょうか。
これは一方では、ハード面である建物を常に良好な状態に維持しつつ、他方でソフト面として、個々に住まう人々が互いに他者を尊重しつつ自らの暮らしを充実させることに尽きるでしょう。
そしてこの実現のために、マンション管理士は絶えず知識・情報を提供し、マンションに居住する一員としての自覚を高め意識を喚起させるという作業をバランス良く実行できるプロフェッショナルでなければならないのです。

マンション関連法令

もともとマンション関連には複数の法令が存在し、すでに例に挙げた建替えの問題だけに限らず、
マンションの管理や運営の方法を細部にわたり規律しています。
ここでは、これら関連法規を簡単に紹介していきますが、マンション法規は複雑・難解なため、理解にあたっては、
個々の法規文言の正確な読解よりもむしろ全体の中のどの地点のテーマかを意識することが大切です。
要は「この法律はこの場面で機能するのか…」ということさえイメージできれば、マンション問題への理解はより深まるでしょう。

1.建物の区分所有等に関する法律(通称、区分所有法)

一般に「マンション法」とも呼ばれるマンションの根本法であり、マンション関連法令の理解の出発点となります。
権利者間の法律関係や建物等の管理の仕組みについての拠り所となりますが、あくまで区分所有を規律し、必ずしも住居専用のマンションのみを想定していない点には注意が必要です。

2.被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(通称、被災区分所有法)

政令指定災害によりマンションの全部または大規模な滅失が生じた場合に適用される法律です。
災害時を想定した理解はもちろん大切ですが、法構造の理解を優先的したい場合は後回しにして、平時の仕組みを外観してから取り掛かる方が特徴を捉えやすいでしょう。

3.マンションの建替え等の円滑化に関する法律(通称、建替え等円滑化法)

時を経たマンションがいずれ直面する建替え場面を規律する法律で、区分所有法上の厳格な建替え手続きをクリアした段階から機能します。
この法律によらずに建替え事業を行うこともできる(任意)点と、重要なのは手続き全体の流れの把握であるという点は抑えておく必要があります。

4.マンションの管理の適正化の推進に関する法律(通称、管理適正化法)

マンションの良好な居住環境を確保するためには、マンションに関わる人達の規律もまた不可欠です。
この様々なプレイヤーを規律する役割を有するのが管理適正化法、というイメージで捉えると良いでしょう。
具体的には、マンション管理業者、管理業務主任者、マンション管理士、といった免許者・資格者を中心としたマンション運営に外部から関わる者を中心に規律することでマンション運営の適性を担保することになります。

5.マンションの管理の適正化に関する指針(通称、適正化指針)

マンション運営は管理組合を主体とする適正な管理が行われることが重要である、との認識の下に、管理の適正化を推進するための必要事項を「告示」として国土交通省により定められたものです。
マンション運営において、誰が主体であるべきか、そのためには何が行われ、どこに留意すべきか、という視点が指針全体にわたり貫かれています。

6.マンション標準管理規約(通称、標準管理規約)

個々のマンションの根本規範といえば、言うまでもなく管理規約です。
この規約が分譲会社や管理業者により個々に作成された「案」をベースにしていては、内容がまちまちになり必ずしも区分所有者の要求を満たせないことから、具体的な管理規約を制定する際のモデル(ひな形)となる存在として国土交通省により作成されたものです。
このモデルを引用・使用しつつ個々のマンションの実情に応じた加筆修正を行うことにより、そのマンションにより相応しい規約を作成することが可能となります。
また、標準管理規約に付随する個々の「関係コメント」という注釈は実際の適用場面で、その対象や意味内容が的確に捉えられるように補助する機能を有しています。

7.マンション標準管理委託契約書(通称、標準管理委託契約書)

管理組合とマンション管理業者が業務の委託契約を締結する場合、管理適正化法により一定事項を作成した書面の作成および交付が求められます。
この書面を作成する際の指針となるべきモデル(ひな形)として作られたものが標準管理委託契約書です。
標準管理規約が内部規律のモデルなら、標準管理委託契約書は対外規律のモデルとなるもの、というイメージで捉えられるでしょう。
この標準管理委託契約書にも、的確な運用を可能とするための注釈として「関係コメント」が付されています。

8.長期修繕計画ガイドライン

マンション管理において、維持・保全というテーマは極めて重要です。
とりわけ大規模修繕は、長期修繕計画を踏まえて計画的に実施される修繕のうち、建物の全体または複数の部位を対象として行われるもので、この確実な実施によりマンションの快適な居住環境は確保され、資産価値の維持につながることになります。
このような長期にわたる修繕計画において、基本的な考え方や標準様式を使用しての作成方法を示し、計画修繕工事の適切かつ円滑な実施を図ることを目的として国土交通省により公表されたのが、この長期修繕計画ガイドラインです。

9.その他

これ以外にも、マンション関連の法規として、維持・運営を支える法令は多数存在します。
例えば、私法の一般法である民法はマンションをめぐる権利関係の根底に位置し、マンションの敷地や附属施設の適用関係をカバーする役割を担います。
また、建築基準法はマンションの建築物としての側面全般を規律する重要な関連法となります。
このようにマンションをめぐる法律関係は挙げればキリがないほど多数の法令の存在によって規定され、またバランスが保たれている、といえるのです。

資格試験概要・情報

マンション管理士試験はマンション管理適正化法に基づき、マンション管理士となる資格を有するか否かを判定する国家試験です。
例年11月の下旬頃、国土交通大臣が試験主体となり、公益財団法人マンション管理センターを指定試験機関として実施されます。
年齢・学歴等の受験資格に制限はなく、どなたでも受験できます。
  •  
    試験形式 50問4肢択一による筆記試験
    (試験の一部免除者は45問)
    解答方式 マークシート方式
    試験地 全国の8試験地において実施
    受験手数料 9,400円(非課税)
  • 令和元年度試験は、11月24日(日)に実施されました。
    受験人数 12,021名(受験率86.1%)
    令和元年度試験合格発表 令和2年1月10日(金)
    合格人数 991名
    合格率 8.2%
    合格点 50問中37問以上正解
    (試験の一部免除者は45問中32問以上正解)

令和元年度 試験問題分析

本年は、例年以上に民法の分野が難化したのではないかと感じられました。
その中でも特徴的といえるのが、〔問13〕です。
一見すると物権変動分野の典型である【所有権取得の主張と登記の要否】のテーマを扱っていますが、この問題自体の位置、選択肢の配列は混乱しやすく作られており、場合によってはパニックに陥る可能性もあります。
【問13】 甲マンションの102号室を所有するAが遺言することなく死亡し、Aの相続人であるBとCがAの遺産全てをBが相続する旨の遺産分割をした場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  • AがDに対して、Aの死亡前に、102号室を譲渡したときは、Dは所有権移転登記なくしてBに対して102号室の所有権を主張できる。
  • AがEに対して、Aの死亡前に、102号室を譲渡し、BC間の遺産分割後に、BがFに対して102号室を譲渡したときは、Eは所有権移転登記なくしてFに対して102号室の所有権を主張できない。
  • BC間の遺産分割協議前に、CがGに対してCの法定相続分に当たる102号室の持分を譲渡し、Gが所有権移転登記をしたときであっても、BはGに対して102号室全部の所有権を主張できる。
  • BC間の遺産分割協議後に、CがHに対してCの法定相続分に当たる102号室の持分を譲渡したときは、Bは遺産分割に基づく所有権移転登記なくしてHに対して102号室に係るCの法定相続分の権利の取得を対抗できない。
【分析】
この問題のポイントは、①紛争の対象が102号室全部なのか一部(共同相続人の持分)なのか、②誰と誰との間の紛争か、③民法177条の適用場面かどうか(誰を起点とする物権変動の優劣か)の3点です。
これらを個別にきちんと整理した上で取り組むのであれば、全ての選択肢の正誤は比較的容易に判別できます。
逆に、問題文の前提だけを丸呑みにして正誤を判定しようとすれば、混乱が生じる恐れがあります。
また、この設問は選択肢1から順に正誤の判定を行っていった場合と、逆に選択肢4から判定を行った場合の比較では、後者のほうが混乱も起こりにくく圧倒的に有利といえます。
以下、具体的に肢4からみていきましょう。

[肢4]
①102号室のCの持分をめぐる、②B(他の共同相続人)とG(第三者)の紛争であり、③典型的な遺産分割と第三者の物権変動対抗問題(177条)です。Bは登記なくして第三者Hに対して、この持分の権利取得を対抗できません。
⇒正誤判定: 正しい

[肢3]
①102号室のCの持分をめぐる(Bの主張は102号室全部だが、Bの持分について紛争は生じていない点に注意)、②B(他の共同相続人)とH(第三者)の紛争であり、③肢4との違いは、G(第三者)=遺産分割協議前に登場した者で、民法177条の対抗問題は生じていない。もっとも、Gは民法909条ただし書により保護され得る者で、しかも取得した持分につき権利保護要件としての所有権移転登記まで具備している。
よって、Bは登記なくして、Gに(Cから移転した持分を含めた)102号室全部の所有権を主張できない
⇒正誤判定: 誤り

[肢2]
①対象は102号室全部、②Aの生前に102号室全体を譲り受けたEと、BC間の遺産分割後にBから同じく102号室全体を譲り受けたFとの紛争、③EとFは各々、A(被相続人)=B(相続人)を起点に102号室全部の物権変動を相争う者同士(民法177条の対抗問題)です。
よって、Eは登記なくして、Fに対して102号室の所有権を主張できない
⇒正誤判定: 正しい

[肢1]
①対象は102号室全部、②Aの生前に102号室全部を譲り受けたDと相続人Bとの紛争、③177条の物権変動を争う第三者の範囲の問題です。
そして、177条の「第三者」には当事者及びその包括承継人(相続人はこの典型)は含まれないことから、Bは物権変動を相争う第三者にはなりえず、Dは登記なくしてBに102号室の所有権を主張できます。
⇒正誤判定: 正しい

この設問を良く考察すれば、肢4と肢3との関係は、遺産分割を行った後に第三者が登場する場合の物権変動の規律場面か(遺産分割と177条の第三者)、遺産分割の遡及効(909条)を制限する場面か(遺産分割前の第三者)の問題であり、肢2と肢1の関係は、肢2が177条が適用される典型的な場面であるのに対し、肢1は逆にその前提となっている、という構造にあるのが分かります。
この正誤を肢1から判定していくとすれば、まだ上の①②③といった問題の所在が解答者の頭の中で明確に整理できていない見切り発車段階で前提の正誤を一応判定せねばならず、つづく肢2では場面も登場人物も切り替わる(DからEとFへ)という仕組みになっており、時と場合によっては混乱を引き起こす仕掛けになっています。

試験はふるい落としのため、と言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが、実力ある受験者が本番の緊張感のもとで通常なら簡単に正解できる問題を取りこぼすという悲しい事態は、極力避けなくてはなりません。
このように、マンション管理士試験の民法のレベルは、今後も難化していく恐れがあります。
過去問等の重要性もさることながら、一見複雑な構造に見える問題では下から上に解いていく等、手順や解法を柔軟に変えてみたり、面倒な設問と感じたら後半の設備関連の問題等を解いた後に頭を切替えて再挑戦するなどの工夫も大切となるでしょう。